トレカ EC と業務システム
TorecaSpace の段階的構築
モック検証で固めた要件を、壊さずに育てる。EC 開店から個体管理・オリパまでを 1 本のスキーマで支える設計のご提案。
はじめに
本書は、トレーディングカード EC と業務システム「TorecaSpace」の本実装に向け、株式会社ダイバーがご提供する設計方針・段階的リリース計画・初期構築スコープをまとめたご提案書です。
Phase 0 (モック検証) では、顧客 / スタッフ / マネージャー の 3 ロールそれぞれに専用の Next.js プロトタイプを並走させ、業務オペレーションと UI 体験の温度感を実機で確認しました。この合意のうえに、Phase 1 (EC 開店) を本実装で立ち上げ、その先のフェーズに無理なく接続できる基盤を組み立てます。
「最小限で開店し、必要になった瞬間に個体管理・オリパ・多店舗へ拡張する」を支える段階的アーキテクチャ。1 つ先のフェーズだけは見据えてスキーマを設計し、後戻りを発生させないことが本提案の核となる方針です。
業界の現状と自社 EC の必要性
トレカ EC 市場では、多くのカードショップが「おちゃのこネット」に代表される汎用 ASP(Application Service Provider)を利用しています。初期コストの低さが採用理由として挙げられますが、事業の成長とともにその限界が顕在化してきます。
既存 ASP の課題
- デザインの画一性テンプレートベースのため、ブランド表現に限界があり、カード業界内での差別化が困難です。どの店も同じ見た目になりがちで、顧客からの信頼感・プレミアム感の醸成が難しい状況です。
- トレカ特有機能の欠如個体管理・買取申込・オリパ販売といった、トレカショップ固有の業務フローへの対応が事実上不可能です。無理に対応しようとすると手作業が増え、スタッフの負担が増大します。
- 月額費用と手数料の積み上がり売上規模が拡大するほど決済手数料(3〜4%/件)やオプション費用が重くなり、長期的にはコスト競争力を失います。年商規模が大きくなるほどこの差は顕著です。
- 拡張性の限界多店舗展開・在庫の多拠点管理・スタッフ向け業務 UI など、成長に必要な機能をスクラッチで追加することができません。
自社 EC 構築で得られるもの
- ブランド価値の確立顧客 EC・スタッフ UI・マネージャー画面がすべて一貫したデザイン体験となり、競合 ASP との明確な差別化が実現します。
- 業務フローとの完全整合買取・個体管理・オリパ販売など、貴社のオペレーションに合わせた機能を段階的に実装できます。現場のフローをシステムに合わせるのではなく、システムを現場に合わせます。
- 将来的なライセンス展開同様の課題を抱えるカードショップに本システムを提供するビジネスモデルも視野に入ります。業界標準となる EC プラットフォームとして展開することで、開発投資の回収を加速できます。
- オリパ導入への最短経路オリパは高付加価値商品として業界注目度が高まっています。個体管理基盤を先行整備する本提案の設計は、オリパ受注拡大のための最短ルートです。
おちゃのこネットを利用するカードショップは全国に多数存在します。本システムを「トレカ業界向け EC プラットフォーム」として展開することで、開発コストを複数店舗で分散・回収する事業モデルが成立します。
ご提案内容
主要アプローチ
- ドメイン型の一元管理Zod 4 で定義した
@torecaspace/domainを正典とし、フロント / バック / バリデーションで型と実行時検証を完全共有。 - マルチファイル Prisma スキーマPrisma 7 (
prisma-clientgenerator) をcore / catalog / inventory / order / buyback / work-orderに分割。@namespaceタグで ER 図と仕様書を自動生成。 - 3 アプリ並走の monorepo顧客 EC / スタッフ作業 UI / マネージャー ダッシュボード を独立した Next.js 16 アプリとして配信。ロール別に最適化された UX と、共通ドメインの両立。
- 静的エクスポート + エッジ配信Cloudflare Pages による静的配信で初期表示を最適化。API 層は段階的に追加し、初期コストを抑制。
- 個体管理を見据えたスキーマ先回りPhase 1 から
OrderLine構造・locationIdフィールド等を先に組み込み、Phase 2 への移行時にスキーマを壊さない。
技術スタックの概要
フロントエンドは Next.js 16 (App Router / Turbopack) + React 19 + Tailwind v4 + shadcn/ui (@base-ui/react) を採用し、3 アプリ共通のデザインシステムを @torecaspace/domain のラベル / 並び順 / enum と組み合わせて運用します。バックエンドは Prisma 7 + MariaDB (mysql provider) を中心に、Phase 1 で @prisma/adapter-mariadb 経由で実 DB 接続を行います。CI / CD と監視は Phase 1 後半で整備予定です。
モノレポ構成
pnpm 10 workspace + Turborepo 2 によりルートから pnpm typecheck / pnpm build / pnpm lint を全パッケージに横断適用。prisma generate は postinstall で自動実行し、ER 図 (docs/api/er-diagram.md) も同時に更新されるため、スキーマと仕様書の乖離が発生しません。
段階的リリース計画
事業の成長に合わせて、6 つのフェーズに分割してリリースします。各フェーズは独立した価値を提供しつつ、次のフェーズへの依存関係を明確にしています。
| フェーズ | ねらい | 状態 |
|---|---|---|
| Phase00 | モック検証 — 3 ロールの Next.js プロトタイプで業務イメージと UI 体験を合意。Zod ドメイン型と Prisma 7 スキーマも先行整備済み。 | 完了済 |
| Phase01 | EC 開店 — 注文 → 入金 → 発送 → 配達完了の最小ループを本番稼働。決済代行・配送 API・メール通知を接続し、3 ロール UI を本実装化。 | 本提案スコープ |
| Phase02 | 在庫・買取の本格運用 — InventoryItem / InventoryMovement 導入。1 枚 1 枚を個体 ID で追跡し、仕入価格 ↔ 販売価格の利益が見えるようになる。 |
Phase 1 後 |
| Phase03 | 在庫オペレーション高度化 — 棚マスタの構造化、棚卸モード、棚位置・残容量の可視化。物理的な棚運用とシステムを一致させる。 | Phase 2 後 |
| Phase04 | オリパ販売 — オリパ商品の当選率設計・封入個体追跡・購入演出・発送までを 1 サイクル。独自商品形態。 | Phase 2 完了が前提 |
| Phase05 | 多店舗・拠点拡大 — 拠点モデルの本格運用、拠点間在庫移動、拠点別売上分析。スキーマで先回り済みのため追加コストは小。 | 任意 |
オリパ販売 (Phase 4) には Phase 2 (個体管理) が前提となります。「オリパ 1 個に何を封入したか」を個体 ID で追えない構造のままでは、当選率管理・利益分析・クレーム対応が破綻するためです。
Phase 1 スコープ詳細
Phase 1 (EC 開店) で本実装に切り替える対象を、3 ロール別に整理します。Phase 2 以降に送る項目は明示的に除外し、移行時にスキーマを壊さない先回り設計のみ含めます。
顧客 EC (mock-ui → 本実装)
- 商品閲覧 / カート / チェックアウト149 商品のモックを本実装に置換。検索・絞り込みは基本機能のみ Phase 1 でリリース。
- マイページ注文履歴・配送状況・買取申込履歴。
- 買取申込受付・写真アップロード・査定金額提示まで。
スタッフ作業 UI (staff-ui → 本実装)
- 発送タスクSKU レベルでの発送管理。個体 ID の導入は Phase 2。
- 買取受付 / 出品 / 問合せ4 タスクフローを本実装に接続。WorkOrder + 親エンティティの denormalized view で運用。
マネージャー UI (manager-ui → 本実装)
- ダッシュボード売上 / 注文 / 買取 / スタッフ生産性 / 顧客 LTV の集計。
- CSV ファースト各タブで CSV ダウンロード対応 (要望確定済み)。
バックエンド
- 認証基盤顧客 / スタッフ / マネージャーの 3 ロール。
- 決済代行連携Stripe / Square / SBPS のいずれか (要相談)。
- 配送連携ヤマト B2 / ネコポス。API 連携が困難な場合は CSV 運用を初期は許容。
- メール通知注文確認・発送通知。
投資対効果と将来展開
Phase 1 の初期投資を、事業価値の観点から整理します。比較対象として汎用 EC プラットフォームとの費用構造を用います。
既存サービスとのコスト比較
| 比較項目 | ASP (おちゃのこネット等) | 汎用 SaaS (Shopify 等) | 本提案 (TorecaSpace) |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 0〜11万円 | 0〜数十万円 (テーマ・アプリ) | ¥11,600,000 |
| 月額基本料 | 2,200〜19,800円/月 | $29〜$299/月 (約 4,500〜46,000円) | 運用支援後は実費のみ |
| 決済手数料 | 3〜4%/件 | 0.5〜2%/件 + 決済手数料 | 決済代行の実費のみ |
| トレカ特化機能 | なし | カスタム開発が必要 | 完全対応 (個体管理・オリパ) |
| ブランドカスタマイズ | テンプレート制限あり | テーマ依存 | 完全フルカスタム |
| 他店への展開 | 不可 | 不可 | ライセンス型展開が可能 |
投資回収の試算
EC 経由の売上が年商の 30% 相当(約 3.6 億円)と仮定した場合、ASP の決済手数料 3% では年間約 1,080 万円のコストが発生します。自社 EC では決済代行の実費(1〜2% 程度)に抑えられるため、年間 360〜720 万円の削減効果が見込まれます。手数料削減のみで計算しても、初期投資の回収は 2〜4 年が目安となります。
他店舗への展開シナリオ
Phase 1 完成後、同システムを他のカードショップに提供するライセンス型ビジネスを展開した場合、各店 150〜300 万円/年程度の収益を積み上げることができます。10 店舗に展開できれば年間 1,500〜3,000 万円の収益貢献となり、開発投資の回収期間をさらに短縮できます。
オリパ機能 (Phase 4) は、単価・利益率ともに通常 EC 商品を大きく上回る高付加価値サービスです。個体管理基盤 (Phase 2) を経由して確実に実装できる本ロードマップは、オリパ受注を見越した先行投資として位置づけることができます。
お見積もり
Phase 1 (EC 開店) までの本実装と、リリース後 3 ヶ月間の運用支援を含む概算のお見積もりです。Phase 2 以降は別途、必要なタイミングでご相談のうえ確定いたします。
| 項目 | 内容 | 金額 (税抜) |
|---|---|---|
| 要件定義 / 体験設計 | モック検証結果のレビュー、Phase 1 スコープの確定、決済 / 配送方式の選定 | ¥1,200,000 |
| バックエンド本実装 | DB 接続、認証、決済 / 配送連携、メール通知 | ¥3,600,000 |
| 顧客 EC 本実装 | mock-ui → 本実装への置き換え (注文 / マイページ / 買取申込) | ¥2,400,000 |
| スタッフ / マネージャー UI 本実装 | staff-ui / manager-ui を API 接続、CSV ダウンロード | ¥2,400,000 |
| 本番リリース支援 | 環境構築 (Cloudflare Pages + DB)、データ移行、初期監視 | ¥800,000 |
| 運用支援 | リリース後 3 ヶ月 (月額 ¥400,000) | ¥1,200,000 |
| 合計 | ¥11,600,000 | |
※ Phase 2 (個体管理) 以降のお見積もりは、Phase 1 リリース後の運用状況を踏まえて別途ご提示します。Phase 2 のスキーマ拡張は破壊的変更にならないよう設計済みのため、移行コストは最小限です。
費用の根拠と相場感
EC システムの開発費用は、機能の複雑度と対象ユーザー規模により大きく異なります。汎用 EC(最低限の注文・決済のみ)では 300〜800 万円程度が相場ですが、今回のように顧客向け EC・スタッフ業務 UI・マネージャーダッシュボードの 3 アプリ並走 + 買取・個体管理を見据えたスキーマ設計を含む場合、1,000〜2,500 万円が一般的な相場感です。
本提案は Phase 0 のモック検証で要件が大幅に固まっており、認識齟齬による手戻りリスクが低減されています。また、Cloudflare Pages による静的配信・Turborepo によるモノレポ構成など、保守性・拡張性を高める設計を採用しながら、初期フェーズの実費を抑えています。
Phase 2 以降の概算規模
| フェーズ | 主な追加機能 | 概算規模 (税抜・参考) |
|---|---|---|
| Phase 2 — 個体管理 | InventoryItem / Movement 導入、利益管理 | ¥3,000,000〜¥5,000,000 |
| Phase 3 — 棚管理 | 棚マスタ、棚卸モード、残容量可視化 | ¥2,000,000〜¥3,000,000 |
| Phase 4 — オリパ | 当選率設計、封入個体追跡、購入演出 | ¥3,000,000〜¥5,000,000 |
| Phase 5 — 多店舗 | 拠点モデル本格運用、拠点間在庫移動 | ¥3,000,000〜¥5,000,000 |
| 全フェーズ完了時の累計目安 | ¥22,600,000〜¥29,600,000 | |
※ Phase 2 以降の金額は現時点での概算参考値です。各フェーズ開始前に改めて詳細見積もりをご提示します。
実施スケジュール
要件定義確定を起点とした Phase 1 の標準的なスケジュール感です。バックエンドとフロントエンドは並行して開発を進め、全体の期間を短縮します。
| 期間 | 工程 | 主な成果物 |
|---|---|---|
| Month 1〜2 | 要件定義・体験設計確定 | スコープ確定書・ワイヤーフレーム・DB 設計書 |
| Month 2〜4 | バックエンド開発 | DB / API / 認証・決済・配送連携 |
| Month 3〜5 | フロントエンド開発(並行) | 顧客 EC・スタッフ UI・マネージャー UI 本実装 |
| Month 5〜6 | 統合テスト・UAT | テスト仕様書・バグ修正・顧客検収 |
| Month 6〜7 | 本番リリース | Cloudflare Pages 環境構築・データ移行・公開 |
| Month 7〜10 | 運用支援(3 ヶ月) | 問合せ対応・不具合修正・パフォーマンス監視 |
※ 上記は要件定義確定日を Month 1 の起点とした目安です。決済代行・配送会社の選定・契約状況により前後する場合があります。
前提条件・ご確認事項
- 商品データ・画像の提供商品マスタ・価格情報・商品画像等はご依頼者様よりご提供いただきます。データ形式は別途ご相談のうえ確定します。
- 外部サービスとの契約決済代行会社(Stripe / Square / SBPS 等)、配送会社(ヤマト運輸等)との契約・審査対応はご依頼者様にてお願いします。
- ドメイン・インフラ費用ドメイン取得・更新費用、Cloudflare Pages / R2 等のインフラ費用は本見積もりに含まれません。利用状況に応じた実費が別途発生します(通常月数千円〜数万円程度)。
- 仕様変更への対応要件定義確定後の仕様変更は、内容に応じて工数・費用を変動させていただく場合があります。変更が発生する際は事前にご相談します。
- 守秘義務本提案書の内容および開発過程で取得した貴社情報は、厳重に管理し第三者へ開示いたしません。
- 見積もりの有効期限本見積もりの有効期限は提出日より 30 日間です。
おわりに
本提案の内容についてご不明な点やご相談がございましたら、contact@diver.jp までお気軽にご連絡ください。モック検証で固めた業務イメージを、無理なく本番運用に接続できるよう全力でサポートいたします。